能動防御(アクティブ・サイバー防衛)とは?

近年、AI の発展に伴って、サイバー攻撃の手法も高度化してきています。たとえば、AI を使って巧妙に生成されたフィッシングメールは、専門家でさえ本物かどうかを即座に見分けられないという調査結果も出ています。

こうした状況では、従来型の認証方式だけに依存するのはもはや危険と言えるでしょう。

その一方で、生体認証技術、特に 指紋認証 は依然として広く使われています。スマートフォンやセキュリティデバイスでの指紋認証モジュール市場は、2031年に向けて拡大が見込まれており、AI と組み合わせた認証強化の需要も高まっています。

ただし、最新の研究では、指紋認証にもサイドチャネル攻撃や偽造攻撃が想定され、これを防ぐには暗号技術や動的な信号処理が必須との報告もあります。

こうした技術的課題を背景に、国や企業は従来型の「守り」のセキュリティから、攻撃を未然に防ぐ「能動防御(アクティブ・サイバー防衛)」への転換を進めています。実際、日本では 2025年春にこの概念を制度化する法律が成立し、2026年発効を目指す動きです

これにより、被害後の対応だけでなく、事前に脅威を察知して対抗する体制が整おうとしています。

重要なのは、こうした対策が “個人情報保護” と矛盾しないように設計されることです。個人の指紋データや生体情報は極めてセンシティブであり、不適切な取り扱いがなされれば重大な侵害を招きかねません。そのため、認証技術には匿名化、暗号化、差分プライバシーなどの工夫を取り入れる必要があります。

最後に、私たちユーザー側にできることとしては、二要素認証(MFA:Multi-Factor Authentication)の導入、定期的なパスワード更新、怪しいメールやリンクの警戒など基本的な “セキュリティ意識” を維持することです。AI を駆使する攻撃者に対抗するためには、技術と人の両輪の対策が今後ますます重要になるでしょう。